(全文日本語訳) Epic GamesのUnreal Engine 5はグラフィックスに世代交代をもたらす ー PS5 リアルタイムテックデモ ー
Epic Games(エピックゲームズ)のUnreal Engine(アンリアルエンジン) 5はグラフィックスに世代交代をもたらす
ディーン・タカハシ (Dean Takahashi, GamesBeat リードライター)
2020年5月13日 8:15 AM
Epic Gamesは今日「Unreal Engine 5」を初披露し、デモ映像で『Fortnite』を支えるゲームエンジン——PlayStation 5やハイエンドPC、それにモバイルデバイスですらも——、それが次世代ゲーム機において、素晴らしくリアルなグラフィックスをリアルタイムで生成する様子を紹介してみせた。
Unreal Engine 5は2021年に登場する、そしてゲーム業界全体がグラフィックスのクオリティを一段と向上させるためのツールの一つになると、Epic Games CEOのティム・スウィーニー(Tim Sweeney)はGamesBeatとのインタビューで語った。
「これは新しい機能による、真の世代的な飛躍です。Unreal Engine 5は今までのものを壊してしまうことはありませんが、Unreal Engine 4を使う人ならどなたでも簡単にアップグレードできるでしょう」とスウィーニーは言う。
「これは、いくつかのマイナーバージョンアップデートと似ています。しかし、PlayStation 5で定義された新世代のハードウェアをターゲットとする、より重要な、新規のグラフィックス機能を備えています。これらの機能はPCや他のハードにも対応する予定です」
スウィーニーは、Epic GamesがPlayStation5においてソニーと密接に連携し、ゲームが次世代ハードウェアを最大限に活用できる点を強調した。
しかし彼はまた、Unreal Engine 5はあらゆるゲームで、場所を選ばずに動作するよう設計されたと言う。
ゲームデザイナーはゲーム開発のためにこのエンジンを使えるが、Epic Gamesは、モバイルデバイスから次世代ゲーム機、ハイエンドPCに至るまで、あらゆるもので動作するべくエンジンを変換するという、ハードワークをこなしているのだ。
Unreal Engine 5 の実験台は、7つのプラットフォームで3億5,000万人以上のプレイヤーを獲得した『Fortnite』だ。
『Fortnite』 は今年、Unreal Engine 4技術をベースにPS5とXbox Series Xでデビューするが、最終的にはUnreal Engine 5への移行が予定されている。
またスウィーニーは、業界の多くの人々が(UE5の)先駆者の仕事を引き受けられるとし、現在のUnreal Engine 4と同様、Unreal Engine 5 のライセンス料として売上100万ドルを超えるゲームは5%のロイヤリティを支払うことになると語った。
私はスウィーニーと、EpicチームのメンバーであるCTO(チーフテクノロジーオフィサー)のキム・リブレリ(Kim Libreri, 編者注:アカデミー科学技術賞を2回受賞している)、Unrealアーキテクト(編者注:VPoE、エンジニアリングマネージャ)のニコラス・ペンワーデン(Nicholas Penwarden)に、別媒体のライター同席の上、Zoomでインタビューを行った。
以下、我々の会話を書き起こし、編集したものである。
GamesBeat: 一体、何が起きてるんですか?
ティム・スウィーニー: これは、Epicがゲーム開発者に提供する、次世代のツールと技術のラインナップの初披露です。グラフィックス、それ自体で物語っています。
Epicは常に、3Dハードウェアの最先端の可能性を追究してきました。
次世代においては「Nanite」テクノロジーと、コンテンツ作成をより実用的にするべく実物からスキャンした映画品質のアセットを生成する「Quixel Megascans」ライブラリー、そして「Lumen」ダイナミックライティング(動的光源処理)テクノロジーによって、ジオメトリ(編者注:ここではグラフィカルなオブジェクト、及びデータ群を指す)を新たなレベルへと押し上げます。
しかし私たちの目標は、開発者へのより多くの機能提供だけではありません。現在のゲーム開発において最も困難な課題を解決する、その手助けをすることです。
高品質のコンテンツ構築には、膨大な時間とコストが必要です。私たちは、この(編者注:映画品質のリアリティをもつ)クオリティレベルでゲーム開発ができるよう、生産性を高めたいのです。
Naniteは、ポリゴンを一つ一つ気にする必要から、開発者を解放します。
最高品質のアセットを作成すれば、あとはエンジンの問題であり、それを分類して、各プラットフォームに合わせて整理したり、スケーリングしたりするだけです。
これはQuixel megascansライブラリと連携していて、ここではUnreal Engineを使用したゲームで無料で使えるように、急速に増加している膨大なアセットのコレクションを、誰しも利用できるようにしています。
ゲーム用に新しく椅子や山、岩を作る必要はないのです。
Lumenテクノロジーは、ライティング処理を待つ必要と、制限された動的ライティングの中でゲームを開発することから開発者を解放します。
私たちは、開発者の生活をより楽に、より生産的にし、より効率的なビジネスを構築できるようにしたいのです。
これは当社のオンラインサービスにも及んでいます。
私たちの目標は当初から、全てのプラットフォームで全てのプレイヤーを繋ぐ、ということでした。
私たちはこれを『Fortnite』で開拓し、ソニー、Microsoft、任天堂、Apple、Googleのデバイス、あらゆるデバイスを接続し、誰もが一緒にプレイできるようにしました。
私たちは、積み上げられたオンライン技術の全てを取得し、マッチメイクやデータストレージ等の基本的なゲームサービスを含めて、それを全開発者に公開しています。
さらに、7つのプラットフォームで3億5,000万人以上のプレイヤーと22億人以上のソーシャルコネクションを持つ、『Fortnite』のために構築したアカウントシステムとフレンドグラフも、全ての開発者に公開しています。
今では誰もが使えます。このようなマルチプラットフォームのオーディエンスを獲得するためのEpicの全ての取り組みを利用して、ご自分のゲームでこのシステムを使ったり、プレイヤーがフレンドを追加したりすることがシステムへの貢献となります。
これまで、それぞれのプラットフォーム上やロックされたSteam上にあったものを、隔てる壁のない庭バージョン(編者注:オープンプラットフォームの意)に作り変えることで、誰もが共に恩恵を得られるのです。
これら全てを、あらゆる開発者に無料公開しています。これが、次世代に取り組む私たちの精神です。
全ての開発者にサービスを提供し、私たちがゲームで得た成果を、生産的かつ効果的に彼らが得られるよう、支援しています。
キム・リブレリ: ゲームやインタラクティブな体験のコンテンツを作る上で一つの課題は、それを大規模にする労力です。
Quixel megascanライブラリについてティムが言ったことに加えて言うならば、私たちが作った超高密度ジオメトリシステムであるNaniteもそうです。
つまり、このエンジンを使う全ての業界人は、従来のオーサリングプロセスを気に病む必要はありません。
映画品質のアセットを読み込むだけで、エンジン内で動作します。エンジンが全作業を陰でやってくれるのです。
最終的なターゲットがモバイルをカバーする場合でも、エンジンはゲームアセット作成についてまわる例の面倒な作業なしに、そのプラットフォーム用の巧緻なLOD(精細さが異なるアセット)を生成します。
このデモには、環境チームとしてEpicの中堅の環境アーティストのほかに、映画のVFX制作会社からやってきた数人が参加しました。彼らはこう言っていました。
『すごい!これはクレイジーだ。まるでメタバース(編者注:参加型の3D仮想世界)でオーサリング(編者注:直感的な構築作業)をするみたいだ。ふと岩を掴んでも、本当に岩に見えるよ。動かしたり、大きくしたり小さくしたり、照明を当てたり、周囲を調整するのにいじっても、ちゃんとそうなってくれるんだ』
アーティストの使い勝手と、入手できる映像リソースの大きな飛躍ですね。
あのビデオは本物です、実際にはPlayStation(編者注:PS5開発機)の背面に、HDMIキャプチャーデバイスを接続しました。あれが、エンジンが生成したピクセルなのです。
楽にハイクオリティを得ること、それが私たちが目指すものです。
GamesBeat: あの映像は本当に素晴らしいものですね。例えばモバイル、新型のゲーム機やハイエンドPCに至るまで、ゲームがどのように表現されるのか期待はありますか?
スウィーニー: 今回の目的は、出来うる限りの最高レベルクオリティでコンテンツを構築することであり、エンジンが全てのプラットフォームに自動的にダウンスケールしますから、テクスチャマップやLODのポリゴンを気にする必要はありません。ただテクノロジーに任せればよいのです。
今回のデモは、PlayStation 5と他の次世代ハードウェアで動作する、最高レベルのクオリティをデモンストレーションしています。
これらの機能を持たない他のプラットフォームでは、従来のレンダリングパイプラインを使用して、皆さんが構築されたアセットをより従来のLODにダウンスケールしたレンダリングが出来るようにします。
このデモのバージョンは、3年前以降に出たAndroidデバイスで実行できます。ポリゴンのディテールはかなり低くなりますが、同じシーン、同じゲームを作成できます。
そうする必要があったのです。というのは、先に述べたように、今年UE4で次世代コンソール用『Fortnite』をローンチするからです。来年中にはUE5に移行します。
『Fortnite』は現在対応中の7つのプラットフォームを引き続きサポートし、新たに発表された2つの新プラットフォームも加わります。全てのハードウェアでゲームをサポートしなければなりませんし、ゲーム開発者がどんなアセットやコンテンツも、2度作る必要がないようにしなければなりません。
GamesBeat: 「Unreal Engine 5」と呼称することについてですが、その決定では何が重要だったのでしょうか?それがUnreal Engine 5に格上げされた違いは何だと思われますか?
スウィーニー: これは新しい機能による、真の世代的な飛躍です。Unreal Engine 5は今までのものを壊してしまうことはありませんが、Unreal Engine 4を使う人ならどなたでも簡単にアップグレードできるでしょう。これは、いくつかのマイナーバージョンアップデートと似ています。
しかし、PlayStation 5で定義された新世代のハードウェアをターゲットとする、より重要な新規のグラフィックス機能を備えています。これらの機能はPCや他のハードにも対応する予定です。
私たちは、ゲーム開発の新しいパラダイムを可能にしています。このパラダイムでは、世代ごとに開発者を煩わせる一連の新しい問題を取り込み、うまくいけば古い世代の問題を取り去ることで、もう心配する必要をなくします。
私たちは今世代からコンテンツのスケーラビリティの問題を取り除き、開発者にゲーム構築の新しい方途を考えてもらおうとしているのです。これは『Fortnite』で学んだことの何点かに基づいています。
ハイエンドのコンソールゲームを作成できますし、その見た目は素晴らしいものです。と同時にまた、スマートフォンで動作させることもできます。
より多くのプラットフォームで配信することで、ハードコアなゲームのオーディエンスよりも遥かに多くのオーディエンスを獲得できます。
テクノロジーはそれを可能にし、より生産性を高められます。オンラインツールセットでも同じことができます。
私たちはゲーム業界全体がより良いところに行けるよう、支援したいのです。
GamesBeat: リリースまでにはまだ時間がかかると思いますが、Unreal 4からUnreal 5に移行しても同様のビジネスモデルはありますか?違うところがありますか?
スウィーニー: Unreal Engineのビジネスモデルは同じです。ロイヤリティベースのモデルで、ゲームの成功は私たちの成功でもあります。ゲームの総売上の5%です。
今世代では、今年の1月まで遡って、全ゲームの最初の100万ドルの収益をロイヤリティから免除することにしました。
これでインディー開発者にとっては始めるのが少し簡単になり、ゲームが成功するまで、エンジンのコストを心配する必要がなくなりました。
GamesBeat: 確かに現在のスマートフォンや古いハードウェアにも対応していまね。でも、よりハイエンドのハードでは、PS5のデモを見て分かるように、これらの機能を可能にするアーキテクチャには以前のPlayStation 4ではできなかった、何か特別なものがあるのでしょうか?
ニコラス・ペンワーデン: ハードウェアやCPU、GPUだけでなく、次世代プラットフォームの新しいI/O機能もスピードが速くなり、より多くのデータを即座にストリーミングできます。
Naniteが実行することの1つは、実際に必要な三角形だけをメモリに保存することです。数百億もの三角ポリゴンがあるシーンでは、全てのデータを一度にメモリに置くのは現実的ではないからです。視点の移動に合わせ、動的にストリーミングできる必要があります。
GamesBeat: それはSSDによるものですか?あるいは、もっとたくさんのクラウド技術がここで機能しているのでしょうか?
ペンワーデン: 今回のケースでは、次世代ゲーム機のSSDと他のハードウェア機能がそれを可能にしています。
GamesBeat: この技術にクラウドベースの要素はありますか?誰かが今すぐリモートでこれを使い、付け足すハードウェアがたっぷりあるオフィスにいるのと同様に生産性を上げられるでしょうか?
リブレリ: 全体として、このエンジンはクラウド配置されたGPUにとてもよく適合します。自分たちでそういった問題に対処しなければなりません。皆が自宅にワークステーションを持ってはいませんからね。Amazonやクラウドプロバイダーが持つ一般的なフレームワークは素晴らしいものです。
人々が「Nanite」を理解し始めると見えてくるのは、データのストリーミングです——これは1次キャッシュと2次キャッシュだけでなく、クラウドベースの3次キャッシュまであります。人々がどこで気付くか見物です。
ただし、ストレージを実際のハードウェアから切り離せるように次世代のエンジンを確実に設計しています。
スウィーニー: ソニーの新しいPlayStation 5は驚くほどバランスの取れたデバイスです。GPUのパワーだけでなくストレージの帯域幅も桁違いに広く、よくある緻密なレンダリングにとどまらず、プレイヤーが世界を動いていくのに合わせて動的ストリーミングができるのです。
これは、より大規模なオープンワールドゲームで、この手の精細さをレンダリングする上で非常に重要なことです。
メモリ容量に収まる全てのものをレンダリングするのと、数十GB(ギガバイト)規模のゲーム世界を持っていることは全くの別物です。
リブレリ: これがUnreal Engine 5の目標です。巨大で、複雑で、大規模な世界を、信じられないほどのディテールでマシンにストリーミングすることができます。ですから従来のやり方で、オブジェクトがポップインするのを見ることがなくなります。
もう1つ注目すべき点は、「Niagara(ナイアガラ)」が洗練され、リリース可能で、使用できる状態にあり、そこにはクールな新機能が山ほどあることです。
建物の中では、私たちが行っている流体力学や、あらゆる種類のクレイジーなものが見えてきます——虫は、灯りがあちこち照らすのに反応するのです。これは、私たちにとって良い機能でした。おかげで、デモをもうちょっと次世代的な感じにするのがすごく簡単になりました。
Niagaraが素晴らしいものになったことを非常に嬉しく思います。やがては、次世代のUnrealゲームは全て、Niagaraを使うようになると期待しています。
GamesBeat: それはプラグインですか?
リブレリ: VFX(視覚効果)システムです。パーティクルや流体などのクールなシグナルが表示されるたびに、ローカル側のナイアガラと、新しい物理/破壊システムである「Chaos」を組み合わせています。剛体の衝突判定や破壊など、全てがそうですね。
GamesBeat: グローバルイルミネーションといえば、Pixarの映画か何かを思い出させます。
リブレリ: 私たちは、世界がとてもリアルで、本当に写実的に見えるようになったと感じられるところまで行きたかったのです。動的なグローバルイルミネーション(GI)なしでは実現できません。
何年も前から、GIをベイク(編者注:演算結果をテクスチャに固定する処理)できるLightmassと呼ぶシステムをエンジンに積んできましたが、問題は、次世代においては全てを動かし、アニメイトし、破壊可能でなければなりません。ライブGIソリューションが必要でした。
そこで、やってみました。
私たちはUnreal Engine 4でも、スクリーンスペース・グローバルイルミネーション(SSGI)等、ライブGI支援のためにいくつかの実装をしていました。
しかしゲーム機のパフォーマンスレベルにおいて、非常に大きな空間で動的なライティングの実現を完璧に成し遂げたのは、今回が初めてです。
素晴らしいです。
彫像が林立する大きな空間で屋根が開くとき、あの光は、私たちはひとつもキーフレーム化(編者注:ベイク処理と同意)していません。壁が開いたので、空間を照らしたのです。
ペンワーデン: これはビジュアルの忠実性を新たなレベルで実現するだけでなく、ワークフロー面でも変革をもたらします。
アーティストはライトマップUV(座標軸)を変える必要がありません。環境全体にプローブを手動配置する必要はありません。ライティングを決めるのに何時間もベイクする必要はありません。
環境をビルドしつつ、そのエディタでライティングがアップデートされるのを見るだけです。デプロイ(配置)すれば、これらは全てコンソールで動作します。
リブレリ: このデモを作っていて最もクールだったのは、私がオフィスにいるときはアーティストたちの席のすぐ隣にいて、彼らの多くがモニターを私の方に向けていたことです。
彼らが世界を作っていて、文字通り山を拾い上げて動かしたり、落としたり、光の方向を変えたりするのを見ているのは気分がいいものです。とてもシュールな体験ですね。未来を見ているんです。
彼らはもう、昔の仕事のやり方に戻りたいとは思わないでしょう。
GamesBeat: コンシューマ向け製品を改善しつつ、開発者のQOL(生活の質)を改善するシステムがあるというのは珍しいことではないでしょうか?大抵は、新しいグラフィックスや新しいエフェクトといったゲーム開発での大きな進歩があると、その陰では膨大な作業が必要になるものです。これが両サイドを改善することは稀でしょう。
リブレリ: 昔はそんなことはありませんでした。でも正直言って、最近のハードウェアのパワーは凄まじいもので、両方のクオリティを改善できるところまで来ています。
開発者としてめちゃくちゃに複雑極まるオーサリングをしている間にも、エディタでシミュレーションをすることだってできるんです。リアルタイムにゲーム機でプレイできます。とてもフレキシブルなんです。
優れたゲームを作るのはイテレーション(反復工程)であり、それに費やす時間です。私たちに大切なことは、開発者が優れたゲームプレイ等の重要なことに集中できるような、アクセシブルなツールを用意することです。
それが、QuixelがEpicの一部であるひとつの理由です(編者注:スウェーデンのQuixelは2019年11月にEpic Games傘下に入っている)。
開発者が岩や木やちっぽけな草を作るのに、時間の大半を費やしてほしくない。そんなことをする必要はないんです。私たちは、いつまでも古くならないハイレベルなクオリティに仕上げることができるのです。
このデモで最もクールだったのは、普通はILMやWETAなどの大手VFX制作会社でしかレンダリングできない、映画用のアセットを使用していることです。それを今回のデモに組み込みました。最高ですよ。
GamesBeat: Unreal Engine 4から7年経ちましたか?いかに難しいものなのか、教えてくれますか?7年間で何百人もの人が働いていますか?このプロジェクトはどれくらいの規模なんでしょうか?
スウィーニー: Unreal Engine 5の最初の作業は数年前にスタートしました。
ビデオに出演していた若いグラフィックスプログラマーのブライアン・カリス(Brian Karis)が、LumenだけでなくNaniteテクノロジーも使って実験を始めました。
ペンワーデン: ええ、私たちは数年前に、次世代エンジン、特に次世代グラフィックスの重要な機能とは何か、ブレインストーミングを始めました。
私たちはいくつもの研究開発プロジェクトを立ち上げて取り組み始め、私たちに何ができるのか、そして現実への忠実性とワークフローの両面で、世代を真に大きく変えられるのはどこなのかを明らかにしたのです。
私たちが時間をかけて築き上げた研究開発プロジェクトは、まさにそこから始まりました。時間をかけてチームを拡大していき、ご覧いただいたデモを完成させました。
リブレリ: ブライアン自身は素晴らしいエンジニアですが、技術部門アーティストと呼ばれるのにうんざりしています。というのも、アートやビジュアルへの共感を彼は強く持っているからです。
私はEpicに6年、在籍しています。その間、彼はずっとこの仕事をしたいと話していたんです。
数年前私たちは「リサーチしてみて」と言いました。そしてついに昨年の今頃、初期段階の成果を見て、こう言ったんです。「これはすごい!これは成功するよ」と。
デモチーム全員を動員して、今回のデモを作成しました。
いつもちょっと怖いですね、実際に見て触って、自分が作っているテクノロジーで何かを作ってみるまでは、全部が無駄になってしまうこともあるので。これは楽しかったです。わくわくしました。この結果を、私たちはとても誇りに思っています。
GamesBeat: このデモには何かバックグラウンドがあるのでしょうか?特定のゲームを表しているのでしょうか?
リブレリ: 何もないとは言いません。私たちは過去に映画的なデモをたくさん作ってきましたが、ここ数年は、よりゲームプレイに近いものを作っています。もう一度やりたいと思ったんです。本当にゲームになり得るものを作りたかった。
探検家のキャラクターを作ろうと考えていました。『Uncharted(アンチャーテッド)』や『ララ・クロフト(編者注:トゥームレイダー)』といったゲームが好きなので、世界を踏破する探検家のキャラクターを作ろうと。
Quixelは友人で、「やあ、新しい岩とかいくつかの洞窟とか、すごいのを作ってきたよ」と言ってくれました。私は去年の夏、マレーシアに行ってバトゥ洞窟を見に行っていたんです。こんな感じなんですよ。写真を何枚か持って帰ってきて、「これを見てくれ。こういうのはないのか?」それを繰り返しました。
私たちは、極めて自然に感じられるものが欲しいと思っていました。写実的に参照できうるようなものです。
実際に写真を見たり、現実の世界を研究せずして、フォトリアルを実現するエンジンを作ろうとするのは困難です。そこを出発点に、発展していきました。
ティムが役目を果たしてくれました。デモの最後に出てくる街や崩れかけた大きなものの部分は、ティムがもう少しバラエティに富んだものにしてほしいと求めたところです。
私たちには最高のチームがあります。正直なところ、リアルタイムでのものづくりはとても楽しくて仕方がありません。思わず夢中になります。
GamesBeat: ネットの反応を予想してみると、こんな反発があるかもしれませんね。「いやいや、こんなゲームは絶対に出てこないよ」という。
リブレリ: PlayStation 5で動作しています。ハードウェア実機で動作しています。
スウィーニー: デモはすべて本物です。
重要なのは、これは膨大な新規コンテンツの開発作業ではなかった、ということです。
これらのアセットはQuixelから直接導入したものです。私たちはすぐにそれをひとつのシーンにまとめました。それがこのテクノロジーのポイントで、ひとつひとつ手作業で作ることなく、あらゆるクリエイターが、これくらいハイクオリティのシーンをビルドできるようになります。
リブレリ: Unreal Engineを使った次世代ゲームは、間違いなくこういった仕上がりになると思います。これは煙や鏡のエフェクトでごまかしていません。
私たちは純粋に、自分たちが使っていて楽しいと思えるテクノロジーを構築し、次にゲームチームがデモを作り、そしてそれを利用者の手に渡そうとしているんです。
Naniteの製品版が利用者の手に渡ったら、皆さんが何を見つけ出したのか、どのように発展させたいのか、それらを見るのが楽しみです。
全てのスタジオで効率的であることを確認するため、数多くのワークフローを実行中ですが、今からワクワクしています。こんなに良いものがあると、喜ばないではいられません。私たちは興奮しています。来年は素晴らしい年になりそうですね。
GamesBeat: リリースされるタイミングとしては2021年ということで、このデモをいま得られたのはすごいことですが、ローンチタイトルだけではなく、おそらく第2の波にタイトルを乗せようとしている人たちにとっては、少し遅いように思えます。次世代ゲームの、世代の中間で使われることを想定しているのでしょうか?
スウィーニー: 2021年には『Fortnite』もUE5に対応予定です。すぐに採用されると思います。
開発者はUnreal Engine 4からUnreal Engine 5へアップグレードするだけで移行できますから、ゲームをリビルドする(編者注:作り直しの意)必要はありません。タイミングはぴったりです。新しいゲーム機のローンチ時にリリースされるゲームは、少なくとも2年間、おそらく3年間は開発されています。
これは、次世代テクノロジーを完全に立ち上げて、稼働させるために必要な準備作業です。
過去の世代ごとに代表的なゲームを見てみると、Xbox 360の世代では、2年目になって『Gears(ギアーズ)』などのゲームがリリースされるまで、プラットフォームの完全な能力が発揮されませんでした。
GamesBeat: Unreal Engine 4からUnreal Engine 5に移行するのにどれくらいかかりますか?アップグレードして終わり、というくらい簡単ですか?
ペンワーデン: エンジンのマイナーリビジョンを2、3上げるくらい、と考えています。
Unrealをいつも最新の状態で使っているほとんどの開発者は、4.4から4.5、4.5から4.6へとアップデートすると思います。今回は、Unreal Engine 4を3~4バージョン分、アップデートするくらいの作業量になるでしょう。
GamesBeat: Xbox Series Xにまだ言及しない理由はありますか?PlayStation 5はある意味で先導馬(編者注:日本では誘導馬)なのでしょうか?
スウィーニー: ストレージアーキテクチャや他の要素について、私たちはかなりの長期間、ソニーと緊密に連携して取り組んできました。それが私たちの第一の焦点でした。
しかし、Unreal Engine 5は全ての次世代プラットフォームに採用される予定ですし、『Fortnite』も同様です。
ソニーは偉大なシステムを設計するという最高の仕事を成し遂げました。優れたGPUであるだけじゃないんです。最新のPCハードウェアを真似てアップグレードするという、安易な方法も採りませんでした。
PlayStation 5のストレージアーキテクチャは、いま買えるどんなに高額なPCをも遥かに凌駕しています。このようなイノベーションを見られるのは素晴らしいことです。
これはPCの未来を決める際の助けとなるでしょう。これが世に出るのを見て察すると思います、『すごい!SSD2台か?追いつくのが大変だ』と。
GamesBeat: つまり、その「プロセッシング・ビースト」にデータを入力することは、彼らが直面した問題ですか?このデモがその証明ですか?
スウィーニー: そうです。前の世代では、最も低い共通分母である磁気ディスクを扱う必要がありました。デモのようなシーンをサポートするための多くの帯域幅は、期待できません。
美しいシーンと、長いロード時間、そしてまた、美しいシーン。これがゲーム体験を混乱させました。
次世代に向けた私たちの目標は、シームレスで連続的な世界に他なりません。
そして全ての開発者がそれを実現できるようにすることです。
デモでお見せした忠実性を何キロメートルでも、何ギガバイトでも継続させることができるのです。
GamesBeat: ハードウェア上にあるゲームとは対照的に、持続的なサンドボックス宇宙を持つMMOなど、純粋なクラウドゲーム等にもそれは適用されますか?
スウィーニー: このジオメトリにはインスタンシング(編者注:一回の命令で同一モデルを複数レンダリングすること)があります。同じ岩を100万回使用するとしても、ロードは1回で済みます。
作ることができる世界の規模に制限はありません。ゲームのサイズは数十ギガバイトを超えることはできない場合でも、非常に広大なものを構築できます。
オンラインゲームであれシングルプレイヤーゲームであれ、継続的なオープンワールドゲームのジャンルは大きく成長しています。
ハードウェアが桁違いに向上するたびに、新しいタイプのゲームが登場します。
バトルロワイヤルはこの世代になって初めて成功しましたが、これは大量のアクションを伴う100人のプレーヤーのゲームセッションをサポートするのに、十分な処理能力とクラウドのインフラ基盤がようやく完成したからです。
このテクノロジーが利用可能になった結果、シングルプレイヤーでもマルチプレイヤーでも、新しいジャンルがやがて出てくるでしょう。
GamesBeat: このデモの、一番の売りは何でしょうか?
ダナ・カウリー(Dana Cowley, シニアマーケティングマネージャー): これまでにないレベルのディテール、インタラクティブ性、スケールで、そしてかつてないほど効率的に、ゲームの世界をクリエイトできるようになります。とてもシンプルです。
リブレリ: 次世代ゲーム機は、開発者と消費者に、ゲーム体験の飛躍的向上をもたらすでしょう。Unreal Engine 5は、さらにもう一段の跳躍です。
新しいテクノロジーによってクオリティが2世代分向上したように感じます。
ゲーマーはもちろん、あらゆるアプリケーションでUEを使っている方々にも、未来はとても明るいものとなるでしょう。
友人のジョン・ファブロー(編者注:Jon Favreau, 『アイアンマン』監督をはじめMCU製作の中心者であり、UEを使用するスターウォーズ・スピンオフドラマ『マンダロリアン』製作総指揮)は、このデモを見て、自分の映画セットに導入できないか、きっと聞いてきますよ。
スウィーニー: それはかなり根本的なものです。無制限のジオメトリとストリーミングデータに用意された広大な帯域幅で何ができるのか、これは本当にゲームの限界を破るものです。
現時点で、何でも作れるんです。予算と規模、開発チームによります。そこに作為的な制限は存在しないのです。
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