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SIEの見解 - MicrosoftによるActivision Blizzard買収に関して

SONY INTERACTIVE ENTERTAINMENT OBSERVATIONS ON THE CMA’S REMEDIES NOTICE”

MicrosoftによるActivision Blizzard買収に対して、英国の競争法に基づく規制当局であるCMA(競争市場庁)がMicrosoftへ提示した買収を認容するための救済措置について、意見表明を求められたSIE(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)が提出した文書から11-12 ページを翻訳しました。

 

E. Microsoftは過去に行動コミットメントを遵守しなかったり、公的な声明を尊重しなかったことがある

 

27.
Microsoftは過去に、規制当局に約束したことを守らなかったことがある:

● まず、欧州委員会(以下、EC)は2004年、Microsoftが支配的なWindowsオペレーティングシステム(以下、OS)により、ライバルから必要不可欠な相互運用性情報を奪うという不正行為を行ったと認定した。ECはMicrosoftに対し、合理的な料金でライバルに情報を提供するよう命じ、Microsoftはこの命令に従うことに合意した。これは、MicrosoftActivisionのコンテンツをライバルにライセンスする際の約束とほぼ同じものであった。Microsoftはその後、相互運用性情報に対する不当なロイヤリティ料と特許料の支払いを要求したことでECの命令に違反し、ECはMicrosoftに13億ドルの制裁金を科すことになった。当時、欧州競争委員長だったネリー・クルースは次のように述べている。「Microsoftは、EUの50年間にわたる競争政策において独占禁止法に基づく裁定を遵守しなかったために委員会が罰金を科した最初の企業であった……本日の決定が、Microsoftの違反の歴史における汚点の章を終わらせることを望む」。

● 第2に、ECは2009年に、MicrosoftInternet ExplorerブラウザをWindows OSに違法に結びつけているという懸念を示したことだ。この問題を解決するため、MicrosoftはECに対し、Windowsにインターネットブラウザの選択画面を設け、ユーザーがデフォルトのブラウザを選択できるようにすることなどを約束した。しかし、Microsoftは2011年から2012年にかけてリリースしたWindowsのサービスパックからブラウザ選択画面を削除したため、ECはマイクロソフトが裁定に違反したとして7億3100万ドルの罰金を科した。

 

28.
行動コミットメントの違反ではないものの、ZeniMaxの買収に関連するMicrosoftの行為は、なぜ行動コミットメントには慎重に取り組むべきなのかについて新たな証拠となる。
Microsoftは、ZeniMax買収を提案した際、ECに対し「ZeniMaxのゲームをライバル機で購入できるようにすることを中止したり制限したりするインセンティブはないだろう」と述べている。また、Microsoftは投資家に対して「我々はクロスプラットフォームプレイを強く推奨している。なぜなら、それがゲームのエコシステムにとって良いことであれば、我々にとっても良いことだからだ。Bethesdaのコンテンツをすべて(競合プラットフォームから)引き抜くつもりはない」と公式に表明している。しかし買収成立の直後、Xboxのトップであるフィル・スペンサー氏は、この買収は最初から、Xboxのために「素晴らしい独占ゲームを提供する」ためのものだったと明らかにした。スペンサー氏はその後、Bethesdaで最も人気があるタイトルの『Starfield』と『Elder Scrolls』の今後発売予定の2本は、Xbox独占タイトルになることを認めた。このニュースを受けBethesdaのマーケティング責任者であるピート・ハインズ氏は、「申し訳ない。”申し訳ない"としか言いようがない」と述べている。
                                                                                                         
IV. 結論
29.
結論として、ゲーム機とクラウドゲーミングに生じた競争上の損害に対処するため、本取引は禁止されるか、構造的な救済措置の対象となるべきである。
SIEは、Microsoftと合意に達することに、ましてや効果的な監視と執行が可能かどうかに、極めて懐疑的である。
その結果、MicrosoftとSIE間の合意の基礎となるよう設計された行動的コミットメントは、有効な競争を維持するような合意が成立する現実的な見込みがないため、CMAに受理されるべきではない。
より一般的には、行動的救済措置は、MicrosoftPlayStationに対して与える影響力と、CMAが行動的コミットメントを規定し、監視し、取り締まり、執行することの難しさから言って、本件に適さない。

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原文PDFリンク

https://assets.publishing.service.gov.uk/media/64086532d3bf7f557532cefc/2023-03-07_Microsoft-Activision_-_SIE_Observations_on_Remedies_Notice__Revised_NCV__redacted.pdf

 

英国CMAとEU欧州委員会アメリカのFTCの三者についてはMicrosoftによる巨額買収に時間をかけた審査をしている状態です。表向き、三者間の連携はなく、EC委員などは他者の意見や態度には影響されない、と独立自尊をアピールしていました。

SIEが反対する理由は翻訳した部分以外にも縷々挙げられているので、ご一読をおすすめします。

買収が成功するのか否か、どちらになってもMicrosoftとその他の競合他社との関係は変化することは間違いありません。一番興味があるのは3年前にSonyグループとMicrosoftが結んだクラウドとAIに関する事業の提携関係です。現状、既に両社は多くの部門でAzureを介した協業を行っていますが、それらもどうなるのか。そしてMicrosoftと直接ゲーム分野で協業するはずの、ソニーグループの屋台骨といえるSIEは、この買収劇の中で直接、Microsoftのトップ周辺から口撃を受け、応戦している状況です。

大きな変化が生まれる23年が楽しみですね。