The Road to Next Gen Ludens

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PlayStation VR2 開発者による本体とコントローラーの分解解説動画を見る

恒例のティアダウン。ヘッドセットとSenseコントローラーの二本立てです。

 

「今回は、とことん機能と強度を保ったまま、いかに軽く出来るか、というところにこだわってつくっています」

初代PSVRとPSVR2、両方のヘッドセットの設計を担った荒木氏です。

ヘッドセット編では、ハードウェア設計部門 メカ設計部の荒木 孝昌氏

コントローラー編では、ハードウェア設計部門 ペリフェラル設計部の五十嵐 健氏がそれぞれ分解・解説しています。

(以下、ちょっとずつ更新していきます)

PSVR2 ヘッドセット編:

ファンとダクトが空気の流れをつくる、PSVR2の冷却プロセス

PSVR2の「冷却思想」と聞いて驚きました。予測はされていましたが、冷却のためにファンが採用されました。ダクトも配置され、空気の流れがコントロールされています。

新たに搭載したこのファンによって、まずはライトシールドと顔の隙間からフレッシュな空気を取り込み、メイン基板にあるICチップを冷やす」

↑白い外装部品「カバーフロント」上部に左右の通風孔が見えます。

↓カバーフロントを外した様子。ファンとダクトが結構なスペースを占めています。

PSVR2の冷却プロセスはこうなるはずです。

① ファンが基板とカバーフロントとの空間から吸気。

② すると背後のライトシールドとプレイヤー側は負圧となり、新鮮な外気を取り込む。

③ ファンが空気をヒートシンクに送ると、TIMを介してチップが冷却される。

④ 温められた空気はダクトを通り、上部の通風孔から排気される。

 

さらに、

「この空気の流れはICチップの冷却と共にヘッドセットを蒸れにくくするという効果もあり、ユーザーの皆様に快適にプレイしていただくことを目指しています」

↓メイン基板。中央がチップです。

主たる目的はチップの冷却ですが、プロセス②においてプレイヤー顔面とライトシールドで包まれた閉鎖空間にも外気が入り続けます。

その結果として、接眼レンズの曇りや体温による蒸れを軽減することができる、というわけです。

 

ヘッドバンド・ヘッドパッドの改良

PSVR2ヘッドセットは初代同様に頭をシングルバンドで固定する構造で、ディスプレイやチップセット、メイン基板があるスコープ部は独立して動くことができます。これにより、他のヘッドセットによくある「前が重くて首や頭が痛く、疲れる」状態を回避しています。

直接身体に触れる前頭部と後頭部、それぞれクッションとなるパッドがついていますが、これが第一の改善になりました。

おでこにあたる部分、「フロントヘッドパッド」のクッション素材の変更です。

初代PSVRはスポンジでしたが、PSVR2ではシリコンラバー製に。

「ちょうどいいグリップ感を持たせながらも、ねばつかない表面処理を施しました」

スポンジ素材もソフトで短時間の使用には何の問題もなかったのですが、長時間、長期間使用するヘヴィユーザーにとっては深刻な問題になることがありました。加水分解でねばついたり、劣化しやすかったりするせいです。

シリコンラバー採用は朗報です。

 

さらに、初代では側圧の問題、固定するために締め付けると頭の側面が痛くなることがある、という声を受けて、PSVR2ではヘッドバンドの設計を大きく変更。側面の負荷を低減する構造としました。

「前側は柔らかく、後ろ側は硬く、というアプローチによって、側面の締め付けを低減させました」

大きなダイヤルボタン「リンクギア」があるほうが後ろです。後ろはガチガチですね。

前側に柔軟性が保持されているのは、バンド内側の、いわば骨格に当たる樹脂等の部材が大きなサイズでなく細かく分割されていて、外側の表皮が動くとともに骨格も曲がる余裕があるためです。

 

カメラユニット

上部カメラは左右それぞれ通常のネジ固定ですが、下部カメラは左右一つのユニット化しており、さらに直接ネジ止めはせず、ラバー部品を介して固定している状態です。

「このユニットは、精度が特に重要な部品であり、信頼性にこだわって設計しています。
まわりの衝撃から逃げるようにあえて固定せずに、ラバー部品を介して固定されています」

 

フレネルレンズ
「このレンズはミクロ単位での仕込みを入れていまして、
ゴーストと言われる症状はかなり低減できています。
これで輝度も犠牲にせずに、きれいな映像を実現できています」

ミクロ単位での仕込み、これは特許があります。

 

ケーブル脱着

ヘッドバンドとスコープ部は分離でき、データと電源で1本、オーディオで1本の計2本のケーブルがスコープ部からバンド部を通り、リヤバンドから外に出る構造でした。

リヤヘッドパッドの内側にメインケーブルとオーディオケーブルが取り回しされ、バンドの伸縮に合わせてキャタピラ様に移動。

メインケーブルが生えているところは、パッド内側でコネクタになっています。

メインケーブルはUSB Type-CでPS5と接続。長さは4.5メートル。スコープ部と接続する端子形状はよく見えません。

メインケーブルのコネクタ部分から伸びている小さなものは、ヘッドセットを振動させるモーター用です。

 

設計思想

「内部はほぼ左右対称の作りとなっていまして、
見える部分だけではなく、見えない中身の部分も美しくという点にこだわって設計をしています」

「ここにも、プレイステーションのファミリーマークが入っています」

 

「“美しいマシンは速い”のではなく、“速いマシンは美しい”」とは、熱設計の第一人者、鳳 康宏氏の言です。

『機能』だけ放り込んでパッケージすれば良い製品になるのではない、というPlayStationの経験と信念を感じます。

PS3PS4もPS5も初代PSVRもそうでした。全体の構造、部品デザインもそうですし、さらには回路基板の配置そのものが美しいと、毎回評判になっています。

これは、鳳氏の言葉通り、彼らの伝統であり、モノづくりにおける哲学なのでしょう。

 

PSVR2 Senseコントローラー編:

指検知センサー

左右のコントローラーそれぞれ5か所に静電容量センサーを搭載して「指検知」が可能になりました。 

これは「フィンガータッチ機能」と呼ばれ、ボタンを押下しなくても触れるだけで指を検出できるので、手を使った、より自然なジェスチャーをゲームプレイ中に行うことができます。

 

より自然なジェスチャーの実例はこちら

プレイヤーの手指の位置とゲーム内のそれとが同時に動いていて違和感がありません。

PSVR2とSenseコントローラーの指の動きのトレースは完全なハンドトラッキングではなく、静電容量センサーと演算処理とで推測して描画しているのですが、リフレッシュレートが高く安定していて、レンダリングの解像度が高いとぐっと自然に見える、ということでしょう。

『The Dark Pictures: Switchback VR』実機プレイより抜粋しました。

 

静電容量センサーは以下の操作部分に搭載されています。

① トリガーボタン [L2/R2]

② 中指で押し込むグリップボタン [L1/R1]

③④ 親指で操作するアクションボタン×2 [△□/〇✕]

⑤ スティック [L3/R3]

[続く]